①事業年度の考えは?
2020年4月以降に開始される事業年度からです。会社の決算月の翌月からなので、12月決算であれば、2021年1月1日から義務化されます。
②対象となる特定の法人とは?
4つに区分されてますが、一番関係するのが、資本金1億円を超えている法人です。
③どんな手続きが対象になるの?
①健康保険、厚生年金保険の関係では、
被保険者算定基礎届、月額変更届、賞与支払届です。
②労働保険の関係では、
概算・確定保険料申告書、増加概算保険料申告書となります。
③雇用保険関係では、
被保険者取得届、喪失届、転勤届、高年齢雇用継続給付と育児休業給付金の支給申請となります。
スタートの時点では、ごく一部の届出となっていますが、徐々に増えることが予想されます。現時点の印象としては、雇用保険関係の電子申請の頻度が高いと思われます。
④健康保険組合の場合はどうなの?
2020年11月から義務化になっています。
弊社の顧問先の多いT健康保険組合では、被保険者算定基礎届、月額変更届、賞与支払届が義務化の対象となり、資格取得届と喪失届も電子申請することができます。
⑤電子申請のメリットは?
行政の窓口に出向く必要が無く、在宅からも申請が可能なことが、コロナ禍においては大きなメリットです。義務化が始まった2020年4月は、まだコロナウイルスが「未知のウイルス」と言われ、分らないことがたくさんあり、ハローワークの窓口に出向くことに強い抵抗を感じている方が多数いらっしゃいました。例年4月は、入退社の手続きが集中する時期ですので、窓口が3密状態になりやすいのです。
同時に、移動時間、待ち時間がなくなるメリットも大きいです。当然、交通費の削減につながります。また、ペーパーレスであることは、管理のうえで楽になりました。
⑥逆に電子申請のデメリットもあるのでは?
ハローワークを例にあげると、窓口であれば時間がかかっても、通常は当日中に処理されます。しかしながら、電子申請の場合は、手続きの完了がいつになるかは、その繁忙次第となり、早くても2~3日は必要とされます。なおかつ、繁忙期には、申請が集中します。
令和2年の4月は、電子申請の義務化とコロナ禍が重なり、例年にない手続きの遅延が発生し、約半年にわたり解消しないケースもありました。
顧問先から何回も督促があり、大変なご不便・ご迷惑をお掛けしました。雇用保険の離職票などは、優先的に処理されましたが、原則は申請した順番です。
この手続きの完了時期を、完全にはコントロールすることができないことが、デメリットと思われます。
今後メリット・デメリットにかかわらず対応せざるを得ない状況になっていきます。
その場合は、「自社で行うか」「アウトソーシングをするか」の選択になるわけですが、今後のデジタル社会では、遅かれ早かれ電子申請は当たり前の時代になると思います。
⑦電子申請導入のハードルは何ですか。
e-Gov、GビズID、外部連携APIなど、聞きなれない言葉が出てきて、パソコンに苦手意識を持つ方は、その時点で腰が引けてしまうのではないでしょうか。
それと、コスト及び申請できる手続きの種類から、当面はe-Govでの運用を選択するケースが多いと思いますが、そもそもe-Govは、複雑で分かり難く、使いこなすのは大変です。
専門家ならまだしも、他の多くの業務を抱える総務担当者が、月に数件の申請のために、e-Govの使い方を理解し、継続して使い続けることは容易ではありません。