中小事業主特別加入制度について
労災保険は、労働者の業務上災害または通勤途上災害に対する保護を主な目的とする制度のため、事業主、自営業者、家族従事者などは本来ならば補償の対象となりません。
しかしながら、中小事業主、自営業者、家族従事者などの中には、その業務や通勤の実態、災害発生状況からみて労働者に準じて保護するにふさわしい者がいます。
そこでこれらの労災保険の適用がない者に対しても、労災保険本来の建前をそこなわない範囲で労災保険の加入を認めようとするのが特別加入制度です。
特別加入制度は、任意加入ですが、加入・脱退等について都道府県労働局長の承認が必要となります。
中小事業主特別加入制度のメリット、デメリット、問題点
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(1)メリット
労災保険の補償の内容はとても手厚く、たとえば療養給付に関し、仮に健康保険を利用すれば負担すべき3割の自己負担がなくなるメリットは意外と大きいです。さらに、障害・遺族・介護給付など、健康保険にはない保険給付があります。
また、任意保険として労災保険の上乗せ制度もあります。当会でも労働災害保険をオプションとしてご用意しています。 -
(2)デメリット
中小事業主が特別加入するためには①雇用する労働者について保険関係が成立していること②労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。以上二つの要件をみたし所轄の都道府県労働局長の承認を受ける必要があります。
そこで②の労働保険事務組合に対し事務委託に係る費用が発生しますので、この費用負担がデメリットとなります。ただし、労働保険の事務委託は、特別加入に係るものだけではないので、雇用保険の事務手続きや労働保険料申告納付のアウトソーシングとしてトータルで考える必要があります(当事務組合の場合は、特別加入者の手続きに関し追加の費用はいただきません)
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(3)問題点
①特別加入制度の趣旨は、前述の通り、労働者に準じて保護するにふさわしい者に対して労災保険を適用しようとするものです。そして補償の対象は、あくまでも労働者の行う業務に準じた業務の範囲であり、特別加入者の行う全ての業務に対してではありません。しかしながら、加入希望者の多くは、全ての業務に対しての補償を期待するケースが多いと思われます。この部分は、加入を勧める際の説明で最も苦慮するところです。
②取締役ではあるが業務執行権が無く、労働者として認められる可能性が高いにも関わらず、特別加入したばかりに補償の対象外になる場合があります。代表権・業務執行権を有する者で、労災保険の補償を期待する場合は、特別加入以外に選択肢はありませんが、それ以外の取締役等は、労働者として認められる場合もありますので、加入に注意する必要があります。
平成24年度の制度改正事項
①翌年度の給付基礎日額変更を希望する場合は、前年度中(3/18~3/31)に事前の申請が可能になりました。前年度に変更を申請することで、当年度の給付基礎日額は4月1日から変更後の給付基礎日額となり、年度更新前に発生した労災事故でも新しい給付基礎日額により対応が行われます。ただし、災害発生後の変更は不可です。
②従来と同様に労働保険の年度更新時期に当年度について変更する場合は以下の点にご注意ください。
注1)申請前に災害が発生していた場合は、そのあとで給付基礎日額の変更を申請しても承認されません。
注2)申請後に災害が発生した場合は、変更後の給付基礎日額に基づいて給付されます。
平成25年度の制度改正事項
①平成25年11月30日から特別加入申請等の様式がOCR方式に対応した内容に変わりました。
②平成25年9月1日から特別加入者の給付基礎日額の選択の幅が広がり、新たに22,000円、24,000円、25,000円が選択できるようになりました。
平成26年度の制度改正事項
平成26年10月1日から特別加入の加入・脱退などの手続き期間が「申請の日の翌日から30日以内で申請者が加入を希望する日」に広がりました。